2018年10月


 

国際吃音啓発の日記念『吃音啓発&相談会』

 

【日時】20181021日(日)13:30~16:30(開場13:00)

【場所】四日市市総合会館 3階 社会適応訓練室

【参加者】《会員》11名《会員外》43名    合計54名

 

1022日は国際吃音啓発の日です。世界各国、各地で啓発活動が行われます。

三重言友会では、昨年に引き続き『吃音啓発&相談会』を企画しました。イベント前の11:40~12:10には、近鉄四日市駅周辺にて、吃音啓発ティッシュを配布し500個全て配り終えました。例年よりも人出が多いのを感じていましたが、街のあちこちでジャズフェスティバルが開催されていました。それから、昨年もそうでしたが「あしなが育英会」の募金と時期が同じらしく、昨年同様募金を呼び掛けている学生さんたちにティッシュを配布し、こちらからは募金をさせていただきました。学生さんたちは、大きな声で募金を呼び掛けていました。あんな風に吃音のことも啓発できたらいいのかもしれませんが、なかなかその勇気は持てないなぁと思いました。啓発ティッシュを配布することで、少しでも吃音に関心を持つ人が増えればと思っています。

そして、『吃音啓発&相談会』ですが、昨年は、台風の影響で延期になったり大変でしたが、今年は天気も良く、学校などへの周知、情報誌掲載などの影響もあり、定員を上回る54名の参加者があり大盛況で終えることができました。アンケートでも「非常に良かった」という回答が多かったです。                               (報告:T)

 

第一部13:30~15:00 講演会『吃音の「なおし方」』講師:横井秀明さん(言語聴覚士)

 

講演の要旨を、以下の通りお伝えします。

 

吃音が「なおる」とは?

 

 そもそも、「なおる」とはどのような状態でしょうか。例えば、風邪で考えた場合、「頭痛がなくなる、鼻水が止まる、喉の痛みが引く、熱が下がる」など、その症状がなくなることが「なおる」と認識されていると思います。しかし、これらの症状は、常にゼロとは言えません。軽い頭痛や、少し鼻をすする、喉がなんとなくイガイガするような感じ、微熱などは、日常的とも言えますよね。そう考えると、「風邪はなおらない=不治の病」ということになるのでしょうか?

 

 もちろん、風邪は「急速に症状が生じ、通常は短期間で症状が減弱していく」急性疾患なので、吃音とは話が違うと思われるかも知れません。たしかに、吃音はアトピー性皮膚炎や痛風のような慢性疾患と近いイメージがあります。この慢性疾患の場合、基本的には「未来永劫、完全に症状がなくなる」ことを目指すのではなく、「日常生活で困らない程度に症状を抑える」ことが目標となります。これを寛解(かんかい)と呼びますが、吃音の場合、この寛解が現実的なゴールになると思います。

 

 それでは、吃音で「日常生活で困らない」ようになるためには、どのような方法があるのでしょうか。今回の講演では、「吃音の異常度を下げる」ことを目的とする吃音修正法と、「吃音の頻度を下げる」ことを目的とする流暢性形成法を取り上げました。また、この他にも「吃音が気にならないようになる」ことを目的とする認知行動療法や、私たち言友会のようなセルフヘルプグループへの参加も、有効な方法のひとつと言えるでしょう。

 

吃音修正法

 吃音修正法は、吃音に対する不安や恐怖の軽減によって、「吃り方」を変化させることを目指します。具体的には、周囲から否定的な反応(からかいや叱責など)を受けやすい激しいブロックを、繰り返しや引き伸ばし、あるいは、持続時間が短く、緊張の弱いブロックなど、あまり異常に映らないような吃り方に修正していくことを意図した「より滑らかに吃る」ための技法を習得するのですが、代表的なものでは以下の4つが挙げられます。

 

・随意的吃音:わざと音を繰り返すことでブロックを防止する。

・引き出し法:ブロックが出ても、緊張を緩め、引き伸ばし気味に楽に言い終える。

・取り消し法:ブロックが生じたら、数秒間沈黙する(タイムアウト)。

・準備的構え:発声発語器官をスタンバイさせず、中立的な状態から話し始める。

 

流暢性形成法

流暢性形成法は、シンプルに「吃りづらい話し方」を習得する方法で、具体的には以下に示すような「流暢性スキル」を繰り返し練習し、定着させることを目指します。

 

・軟起声:軟らかく、徐々に息を吐きながら話し出す。

・声の持続:文(節)と文(節)の間を途切れさせず、続けて話す。

・発話速度低下:一定のリズムで、ゆっくりと話す。

・構音器官の軽い接触:舌や口唇の力を抜き、やわらかく発音する。

 

私の考え方

ある程度の吃音は受け容れようとする吃音修正法と、全く吃らないことを目指す流暢性形成法は鋭く対立していた時期もありましたが、現在は両者を柔軟に使い分ける「統合的アプローチ」が主流となっています。

私の臨床の方針としては、言語症状の重症度が高く、日常会話での意思疎通にも困難がある場合は流暢性形成法で「スムーズに話す感覚」をつかむことを優先します。吃音の頻度が20%という方は、成人ならばそれなりに重症だと判定されることが多いと思いますが、それでも80%は流暢なわけですから、その時の話し方を常に使えるような練習を繰り返すのです。一方で、日常会話には大きな問題なくても、吃音を気にするあまり、生活上の困難が起こっている場合は、吃音に対する不安や恐怖に焦点を当てた吃音修正法を軸とした統合的アプローチを実施します。最後に、殆ど吃らない(ように見える)ほど表面上の重症度が低い場合は、セルフヘルプグループの参加も勧めるようにしています。「殆ど吃らない」というのは、症状がないわけではなく、言い換えを生懸命するなど、必死に隠しているからですね。それほど深く苦悩していると思われる場合、まず吃音のある人同士で体験を分かち合い、そのことを通じて吃音に対する価値観の変容を図ることが必要だと思います。                        (報告:横井秀明)

 


第二部15:10~16:30 『吃音相談会』

 

2部では、吃音相談会を行ない、参加者からの質問に横井言語聴覚士と会員が答えていきました。吃音児(者)だけでなく、吃音児と保護者など家族での参加が目立っていました。

自分の子どもの吃音しか知らなくて、会員の吃音をみてびっくりすると同時にほっとされた保護者がいました。その保護者は、どのような吃音訓練をするのかはじめて知ったとのことです。何度も就職試験を受けているが、いつも面接試験で落とされており、本腰を入れて息子さんのために参加された親御さんもみえました。

会社で吃音をカミングアウトした方がよいのかどうか、会社ではどのような配慮をしてもらったらよいかなど、簡単には回答しにくい質問もありました。

ある参加者からは、もっと吃音の実態について教育委員会に知らせ、教員の意識を変えていくべきだという励ましのメッセージもいただきました。

アンケートでは、吃音を持つ会員からの具体的な回答は参考になったし、安心したというメッセージが大半で、実施して良かったと思っています。  (報告:H)

 


2018年11月の活動報告