2022年8月の活動報告


《夜のオンライン例会》

日時:8月7日(日)21:00~22:00

場所:ZOOM

内容:『もし、私が吃音ではなかったら』 担当:O

 

参加者:計5名


《例会》

日時:8月28日(日)13:30~15:30

場所:ZOOMを利用しオンラインで開催

参加者:合計7名

 

第一部(13:30~14:30)『吃音改善訓練』 担当:O

 まずは、呼吸法・発声法の復習を行ってから、今日は、「歌はなぜどもらないのか」ということで私の私見ですが、お話させていただきました。

私たちが、発声しにくい、「か」とか、「た」、「わ」などを歌の歌詞を引用して、普通にしゃべったときとか、わざと難発性吃音の状態でしゃべったとき、それを歌を歌って発声すると、どう違うのかを、皆さんに実際にやっていただき、違いに気づいてもらいました。例えば、「カラスなぜなくの♪♬」と歌った時、「カラス」としゃべる時と、口内の、つまり口蓋の拡がり方、喉の拡がり方、そして息がどう出ているか…その違いを具体的に検証しました。このように、「ふだん話すとき」に「歌う時の口・のど・発声」の状態を取り入れてみては…というお話をさせていただきました。

 

 (O)

 

第二部(14:30~15:30)『吃音と身体の関係について語る』 担当:M

これは、私が60年、生きて来て、吃音とともにあった人生から得た、私の私見です。

学術的エビデンスがあるわけではなく、単なる私の感覚を語らせてもらいます。しかし、この感覚こそが、より発声の流暢性が確保できる、もっと言えば、より楽に生きることができる、ひとつのヒントになるという確信が私にはあります。

まず、吃音の状態は、身体の状態、特に筋肉等の緊張が及ぼす影響については、皆さんも感じていることと思います。

わざと吃り、その緊張状態を俯瞰してみると、まず、首の後ろから肩、肩甲骨にかけて、筋肉等が固まって、ギュッと硬くなって、首がすっこんで縮まり、猫背になり、それゆえ、肋骨が上に上がって、息が詰まっている、呼吸が止まっているような状態だとわかると思います。逆に言うと、それらの身体の状態を緩めて、体幹がブレない、スッと立つ状態、つまり、自然なしなやかさのある身体になると、スムーズに声が出るようになります。

これを如実に体感したのは、竹内敏晴先生の演劇レッスンに参加した時です。重度の吃音症状の人が、身体が緩み、身体の体幹軸が整うことで、声がすんなり、発せられるようになるのを観た衝撃は、今でも忘れられません。会長のNさんもおっしゃっていますが、私の吃音症状が比較的軽くなったのは、その竹内先生のレッスンによるところが一番、大きい。

 

お話しは3部構成とします。

まず最初は、その竹内先生のレッスンの内容を語り、なぜ、流暢性が確保できるようになるのかの私なりの考察を述べます。2番目は、その考察を元に、どのようなトレーニングや意識の持っていき方をすればよいのか、について、語りたい。最後にまとめとして、身体に体幹軸を作ることの重要性について、語ります。

一つめの竹内レッスンの内容ですが、竹内先生は生まれながらにして難聴で、自ら意識して、言葉を獲得し、言葉を発することに苦労した経験の上に、声が心の反映として、自然な形で出て、言葉が自由に発せられることによる、人間性の回復というようなことを、演劇の世界で実験的になさってみえた方です。竹内先生の生き様を観ていますと、まず、湧きあがる想いがあり、その想いの発露としての言葉が、本来の自然な自分、人間らしさを取り戻す、ある意味、野生的なものがあり、その野生こそが、先生そのものであったと感じます。そこに私は、すごく惹かれておりました。

竹内レッスンは、理性を捨てさせるものでした。まず、先生は、ヒョウやネコの真似のレッスンをされましたが、先生の背中は、しなやかに俊敏に動き、野生そのもので、魅力的でした。私たち吃音者の背中は、ギコギコと、カクカクと軋んだような、ぎこちない動きしかできません。そのぎこちなさが取れるまで、つまり、緊張している身体の状態を感じて(先生は、身体の声を聴くのだよと、よくおっしゃられましたが)そこをほぐすように、延々と、動物の真似をして、背中が動くようになると、鎧が外れたように、晴れ晴れとした軽さを感じたものです。

 

次に、からだほぐしとして、野口三千三先生が編み出した、「寝ニョロ」という、二人一組になり、一人がもう一人の足を持ち、ゆさゆさとゆするのです。寝て、ニョロニョロと動かすので、「寝ニョロ」と言います。人間は、皮膚という皮袋の中に、体液が入っていて、その体液を、タップンタップンと揺らすのだよ、と竹内先生はおっしゃっていました。やってもらうと実に気持ちよく、身体の強張りもなくなってくることがわかります。その他、腕や足をゆすることで、からだをほぐしていきます。

からだは、ゆすることでほぐれることがよくわかりました。決して、強い揺れではなく、細かい揺れこそが、ほぐすのには、よいのです。細かい振動が身体を調整していくのが、よくわかりました。

声を出す時は、その感情と共に、身体を動かすことをやりました。

先生は、声を届けるというレッスンでは、隣の教室の教壇に立ってみえる先生の額に、声をぶつけるようにイメージして、声がまるで、ボールのように、身体の動作もつけて、投げるのです。周りで観ていると、声がボールのように、あっ、そこに当たった!とか、手前で落ちた!とか、見えるから、不思議でした。

先生は、歌を歌うレッスンもしましたが、これには、その歌詞の内容について、想いを込めるというか、感情とともに歌いました。

 

あと、先生は、あいうえおの母音を出しながら、それに乗っかるようなイメージで、子音を出すといいと。例えば、タという音を、いきなり、タ!と発音するのではなく、あゝ、あゝ、と発音してから、そこに、子音のタを被せていく。

 

これらの意味するところを、私なりに考察すると、言葉の前に、響きがあり、その響きは振動であり、振動は、感情とか想いで成り立つ。そして、この振動は、身体を自然に整えて行き、それが、より自然な発声へと繋がるのではないか?!と、私は感じたわけです。

 

2番目は、では、どのようなトレーニングをしたり、身体への意識で、発声の流暢性を高めることができるようになるのか?についての私見を申し上げたい。

エドガー・ケーシーというアメリカの預言者、心霊診断家が、リーディングで、「吃音の原因は、第3頸椎だ」と言っています。ここは、ちょうど、首の後ろあたりです。ここの不調が、胸骨に作用し、聴覚野の不調に連動して、発声がうまくいかないと。私は、なるほどと思うとともに、竹内先生のヒョウの動きを観ても、そのしなやかさ、美しさの基点は、この部分だと感じました。

また、よく割烹着や祭の服の袖などが邪魔にならないように、背中でバツを作るように、紐で結えますが、ちょうど、その結えた紐のバツの形の真ん中が、この第3頚椎の辺りです。

ここは、ほんとうに重要な箇所だと感じていて、この箇所がピシッと立つと、体幹が整うのです。

体幹が整うと、猫背はなくなり、また、お尻の仙骨を立てるよう、意識すると、スッと体幹軸ができます。

そのことで、氣が流れやすくなり、発声も流暢性が確保できます。

この体幹軸ができることで、エネルギーを最大限に発揮もできて、声もよく通るようになります。

体幹軸を整えるトレーニングは、いろいろあるのですが、この基本はやはり、揺らすことなのです。

軸というと、厳しいトレーニングで作るというイメージがありますが、全くの逆。微細な振動を身体に与えることと、その首の後ろのバツの辺りに立ち、キリッという感じで胸を張った意識と、仙骨を立てる意識が必要だと、私は感じています。

最後に、なぜ、体幹軸が必要か、というお話しをします。

体幹軸ができることで、ブレない身体となり、しなやかさ、美しさができるのです。よく、丹田に意識を!とおっしゃられますが、そこもそうなのですが、私の場合、頚椎、仙骨、丹田と、エネルギーが廻る、巡るイメージが、より身体を活性化させると感じていて、瞑想で、光が身体を巡るイメージをしたりしています。

体幹軸が整うことで、人のことをあれこれ気にしなくなるので、予期不安も軽減されます。

まとめとして、発声の流暢性は、背中の柔らかさと、体感軸が整うことが重要で、そのトレーニングとしては、ヒョウなどの動きを真似するトレーニングや、第三頚椎のバッテンや、仙骨を立てることを意識すること。また、体幹を鍛えるには、身体を揺らすこと。

 

以上、私の感覚をお話ししましたが、よく昔から、目に見えないものが大事と言いますが、吃音にとっても、喉とか前ではなく、自分ではなかなか見えない背中という後ろへの意識で、ずいぶんと改善されると考えています。

 

(M)